FLAMYNGSのフロントマンでもある山岡トモタケ(通称・山さん)が自身の"武者修行"と銘打ち、新宿LOFTのBarステージを舞台に月に一度開催する『One Loom - Premium -』。弾き語りのイベントとして4月にASPARAGUSのギター&ボーカル・渡邊忍を招き開催した第1回目は沸きに沸き、アンコールでのセッションも2曲(!)でまさに"プレミアム"な夜となった。そして5月は、アルカラのフロントマン・稲村太佑を迎え開催する。
だいぶ前から面識はあるものの、弾き語りでの共演は初。しかしながら2人揃って使用するエレキギターが同じブランド・同じタイプである上に、杢目の色まで一緒という奇遇。「初めて同じギターを使っている人を見たし、シリアルナンバーも前後してるんじゃないかな」と笑う山さん。同じギター使いとしていつかは同じステージに、と思っていたそうだ。今回は弾き語りなのでアコースティックギターに持ち替えてのライブになるだろうが、この先には山さんのバンド・FLAMYNGSとアルカラがバンド同士で対バン、同じギターを持ち共演する姿が見られる......なんて夢も膨らむ。そんな夢をたぐり寄せるのは、もしかしたらこの日のツーマンに懸かっているのかもしれない。そんな大一番、ぜひ目撃せよ!(Interview:高橋ちえ)
稲村太佑さんのようなフロントマンになりたい(山岡トモタケ)
山岡:このたびは『One Loom – Premium –』にご出演、ありがとうございます。新宿LOFTのBarステージで去年、『One Loom』と題した弾き語りイベントをやってきまして。今年は、自分の憧れの先輩と弾き語りでツーマンをする『One Loom – Premium –』という形でやっていこうと。太佑さんを今回、お迎えできて嬉しいです。
稲村:おぉ、なるほどなるほど。こちらこそ、ありがとうございます!
山岡:『One Loom』の“L”は、新宿LOFTの“L”という意味も込めているんですけど、“Loom”という単語には“酔っ払い”という意味があるらしくて。弾き語りをしながらお客さんも一緒にお酒を飲みつつ、酔っ払いでも新宿LOFTから羽ばたいていった先輩もいるので、自分もそうなれたら良いなと思ってこんなタイトルにしました。
稲村:素晴らしい、ですよ!
山岡:僕がWHITE ASH時代にアルカラのライブを初めて見たんですけど、“こんなフロントマンになりたい”像が太佑さん、みたいなところがありまして。しかも同じエレキギターを使ってるんですよね。
稲村:VanZandt(ヴァンザント)のギターね。『One Loom – Premium –』っていうイベントに対してのちゃんとした思いもあって、お客さんにもその意思が伝わっているとも思いますし、僕はもう、この日は精一杯やらせてもらう。それしかないですね。(出演者のラインナップを見ながら)同年代やけど一癖も二癖もある人ばっかりやし、この中に自分の名前を入れてもらえたことはすごく嬉しくて。知ってるとか繋がってるからだけではないラインナップやと思うし、しっかり送りバントの役割を果たしまして、この先のツーマンにもっと期待を持ってもらえるようにするのが僕のお仕事かなと思ってますので。
山岡:いやいや、ホームランをお願いします! 太佑さんのソロのライブはこの前、3月の『SANUKI ROCK 2025』でも見させてもらいまして。ギター1本であれだけリズム・ベースもドラムも表現する、ギターと歌だけでバンドを表現できるって素晴らしいなぁ、って。歌の表現にしても自分的には太佑さんの歌い方をもっと吸収すべきなのかなって感じました。体の鳴らし方と言えば良いんでしょうかね。あと、ギターを叩きながら弾くこともやってはみたんですけど(笑)。
稲村:スラム奏法ね。
山岡:前回の『One Loom – Premium –』で渡邊忍さん(山さんとの対談はこちら)とご一緒したのは、ルーパーを使って弾き語りをしてる忍さんが凄すぎて感動したからで。そういう意味で、ギターの技術であったり歌の表現みたいなものも含めて、太佑さんとご一緒したいなと。
稲村:弾き語りはコロナの前、2017年ぐらいからやり始めてたんですけど、やっぱりバンドのほうがメインなのでプラスアルファ、ぐらいの気持ちで最初はやってたんですね。それこそバンアパ(the band apart)の荒井(岳史)さんとかも出ておられる日のイベントに「出てみない?」っていうお話をいただいたことがあって。そんな面白い人たちと一緒にできるんやったらやってみようかな、と思ってギターを買いに行って(笑)。今のアコースティックギターを買ったのはそのとき…? かもしれないですね。
山岡:へぇー、そうだったんですね。
稲村:今から考えたら全然ヘタクソでしたけどね。本筋はバンドで、そのプラスアルファっていう感じで音源を流しながら遊びでやる程度で、弾き語りはボーナスゾーンみたいな感じ(笑)。そしたらコロナ禍があって、1人で歌うとか配信するとかインスタライブで歌を歌う、みたいなのが増えてきて。バンドのほうが動けなかったおかげで、弾き語りに挑戦できた感じでしたかね。でも、コロナのお陰でスラム奏法ができるようになったところがあってね。コロナもどんどん長期戦になって、「流行っとるらしいスラム奏法でもやってみるか」と。できなくてもともとなんで自己満足でも全然良いんですけど、この年齢になっても挑戦したらできるぜ~っていうのを体現して、それを見た誰かのちょっとでも勇気になってくれれば良いなと思って。それでスラム奏法も見よう見まね、間違いまくりでうひゃ~って言いながらやってたんですけど(笑)、やればやるほど何となく形になっていって。何かを始めて成長できたら良いですし、成長するために何かを始める。挑戦するって素晴らしいことやなと思うきっかけでしたね。始めないと次の成長はないし、成長の後には安定があるって言いますけど、安定を狙ってると次は衰退しかない。って、これはASKAさんの名言なんですけども。
山岡:なるほど、へぇー!
稲村:だから、成長する前には挑戦があると思うんでね。今年は『ネコフェス』(アルカラ主催のフェス)を1万人キャパでやろうとしてるんですけども、挑戦することに意味があるなと思ってて。安定とか安心を買うんであればそんなことはせぇへんほうがいい(笑)。でも、せっかく札が回ってきたんやったら、メッチャ失敗したとしてもね、「アイツら、1万人の軍勢に200人で攻めていったよな」って後で歴史に残るだろうし、皆が笑ってくれたらエェかなと。もし1万人と互角に戦えたら、それはそれやし。だから山岡くんがこうやって、もともとはメインのボーカルではないにもかかわらず歌を始めた、(その上で)またバンドになろう、とか。その挑戦していく姿を「もがいてるわ~」って見てる人もおるかもしれないけど、もがくこともできない人が言ってることなんて聞かなくていいし、もがくことで得られることが絶対にあると思う。その、もがき、あがきが誰かの勇気にもなる、それが僕たちの、音楽の世界やから。安心して目をつぶっても進んでいける道が用意されていて、そこに乗っかるだけだとこの日が組まれてないと思うし、たぶん僕たちは出会えてないと思うし。目に見えない何かが縁を生んでくれて、この5月22日を生んでくれてると思うんで。
山岡:なんだか……嬉しいです。